育休取得を職場に申し出た後、育休取得日までの間、職場でどのように過ごしたらよいでしょうか。
特に、男性の方で育休取得期間が長期にわたる場合、上司や同僚から「半年も休むんだー。バカンスだねー」「こっちは忙しいのにいい身分だねー」なんて声が聞こえてきそうです。
以前、私が6か月の男性育休を取得した際、さすがにそこまでダイレクトな反応はありませんでしたが、そう思われているかもしれないと感じ、居心地の悪い思いをしたこともあります。
少人数の部署や日々多忙を極めている人にとっては、一時的とはいえ一人減ってしまうため、しわ寄せが大きくなることでしょう。一方、仕事を手放す側としては、できるだけ円滑に引継ぎを済ませ、育休取得日まで穏便に過ごしたいものです。
そこで今回は、国家資格キャリアコンサルタントの私が、育休までの職場での過ごし方として、人間関係を円滑にするための引継ぎや挨拶の方法を実体験を交えてご紹介します。
育休による休職のみならず、退職や異動の際にも役立ちますので、よかったら参考にしてみてください。
なお、育休を申し出るタイミングや伝え方は「職場や上司への育休相談や申出は、いつ、どのタイミングで言う?」をご覧ください。
また、評価や職場の目が気になる方は「男性育休で評価が下がる?職場の目は?仕事上のデメリットと対処法」で詳しく解説しています。
育休に専念するためにも、業務の引継ぎを万全に

育休中は職場からの仕事を引き受けない
せっかく育休を取得したのに、育休中も会社と仕事のやり取りをされている方もいるようです。
育児・介護休業法上の育児休業制度は、休業期間中の就労は想定されていません。そのため、原則として会社からの仕事の依頼は断ることができます。例外として、会社から依頼があり、労働者がそれに合意した場合は、一時的に就労することも可能とされています。
育休取得を予定されている方の中には、復職後の取り扱いや人事考課が気になり、会社の依頼に応えなければ、と考えてしまう方もいるでしょう。
しかし、ここで仕事を引き受けてしまうと、家事や育児に専念することができず、パートナーや家族に負担がかかります。それが続くと「育休中でも意外と余裕があるのかな」と思われ、仕事の依頼がさらに増え、在宅勤務のような生活となっていまうことも。これでは、何のために育休を取ったのかが分からなくなってしまいます。
私は家事と育児に専念したかったので、育休が受理されたらすぐに引継ぎのスケジュールを立てました。育休開始日までに全業務を引き継ぐことを目標に、少しずつ自分の仕事を切り離していきました。
育休期間が1か月程度であっても考え方は同じです。育休中に仕事を引き受けなくて済むよう、事前に引継ぎをしっかりしておくことをおすすめします。
引継ぎは口頭のみで済ませず、しっかりと引継書を作成
とはいえ、引継ぎってめんどくさいですよね。ただでさえ多くの業務を抱えているのに、それを一つひとつ引き継がなければならないなんて。できればサクッと終わらせたいところです。
そこで、頭に浮かぶのが口頭のみの引継ぎ。
しかし私は以前、職場を退職する際に口頭のみの引継ぎをして痛い目に遭ったことがあります。それからは、引継書作成と口頭での説明の両方を行うことにしています。
育休のときも同じように引継ぎをしたため、比較的スムーズに引継ぐことができ、職場の雰囲気も穏やかに保てました。
引継書づくりには、もう一つ思わぬ効用がありました。業務を一つひとつ書き出すうちに、自分がこれまで何をしてきたのかが見えてきたのです。育休中にこの引継書を読み返したことが、復職後の働き方を考えるきっかけにもなりました。
他部署のメンバーに育休を伝えるのはいつ?どんな方法で?

伝えるタイミングは、上司から公表の了承を得た後
上司が育休を受理した後、引継ぎが必要な同じ部署のメンバーにもそれに近いタイミングで伝達されることになるでしょう。
では、他部署の人には、いつ、どのように伝えたらよいでしょうか。
まず確認しておきたいのが、他部署に伝えてよい状態かどうかです。上司に「他部署の方にお伝えしてもよろしいでしょうか」と一言確認しておけば、勇み足になる心配がありません。
公表の了承が得られたら、あとは相手と最初に顔を合わせたときに、自分から直接伝えるのがおすすめです。
受理・共有前の段階で、情報通の方から「育休取るんだって?」と言われることもあるでしょう。そんなときは、すぐに答えず、いったんはぐらかしておくのも一つの方法です。
その後、上司に「私が育休取ることを○○さんがご存じなのですが、公表されているという理解でよろしいでしょうか」と確認してから伝えるようにしましょう。
人伝に伝わるよりも、自ら本人に伝えたほうが好印象
上司経由で他の管理職に情報が広がれば、やがて他部署のメンバーにも伝わっていきます。このとき、わざわざ自ら連絡しなくてもよい、という考え方もあるでしょう。
しかし、人伝で聞くより、本人から直接伝えてもらったほうがうれしいという方も多いはずです。人伝を頼りにしていると、誰に伝わっていて誰に伝わっていないのか分からず、モヤモヤしそうです。
ちなみに私は、異動先で他部署へ挨拶回りに行った際、「どうせすぐにいなくなるんでしょ?」「そうなんです…」という心の会話が見え隠れして、なんとも歯切れの悪い時間を過ごしました。
この気まずさがあったからこそ、その後の一斉メールと対面での挨拶は、丁寧にしようと決めたのです。
育休前の挨拶はメールだけにとどまらず、可能な限り多くの職員に対面で

育休前の挨拶メールはいつ、何を書く?
従業員数が多い職場や、支店が複数ある職場では、メールでの挨拶が便利です。離れた場所にいる人にも、一度に伝えられます。
ただし、誰に送るかは職場の規模によります。数百人、数千人が在籍する会社で全社員に送れば、かえって迷惑になりかねません。顔と名前が一致する範囲や接点のある人などを目安とするとよいでしょう。たとえば、同じ部署、仕事で関わる他部署、お世話になった上司や先輩など。社内の連絡ルールがある場合は、それに従ってください。
私が勤めていたのは大学で、全職員が互いに顔の見える規模だったため、最終出勤日の1週間ほど前に全職員へ一斉メールを送りました。(育休開始日までの間に1週間の有給休暇を取ったので、育休が始まる2週間前にあたります。)
ねらいは3つ。復職後も気持ちよく働ける関係を保つこと、育休に否定的な方の誤解を解くこと、そして男性育休の意義を知ってもらうことです。
メールに入れたのは、次の4点でした。
- 育児休業の取得期間と復職日
- 育休によって迷惑をかけることへのお詫び
- 育休取得を理解してもらったことへの感謝
- 一人ひとりに挨拶できず、一斉メールになることへのお詫び
職場の人間関係によって好みはあるかと思いますが、この4点はどのような関係性であっても押さえておくとよいでしょう。
参考までに、この4点をもとにした文例を載せておきます。職場に合わせて調整してください。
件名:育児休業取得のご挨拶(〇〇部 〇〇)
皆さま
〇〇部の〇〇です。 私事で恐縮ですが、〇月〇日から〇月〇日まで育児休業を取得することになりました。
休業中は、部内の皆さまはもちろん、関係部署の皆さまにもご迷惑をおかけします。担当業務は〇〇さんに引き継いでおります。
育休の取得にあたり、ご理解とご協力をいただいた皆さまに、心より感謝申し上げます。 本来であれば直接ご挨拶すべきところ、メールでのご連絡となりましたことをお詫び申し上げます。
復職後も、どうぞよろしくお願いいたします。
なお、このメールとは別に、親しい人へ個別にメールを送る場合は、具体的な思い出などを綴っておくと、受け取った人に特別感が伝わります。
一斉メールを送ったら、思わぬ反応が
全職員、しかもトップにまで届くメール。送信ボタンが何かの発射ボタンに見えました(笑)。
一部の管理職から「全員に送るのは不適切」という声はあったものの、返信の大半は好意的なもの。育休経験のある女性職員から育児のコツを教えてもらうこともできました。
誰に送るかは職場によって判断が分かれます。不安なら送る前に上司に「メールの宛先はこちらでよろしいでしょうか」と確認しておくと安心です。
私の場合、この1通が今でも続いている講演の仕事につながっていきます。その後日談は、『パパの育休宣言(準備編)』で詳しく書いています。
朝礼で挨拶する場合は、短く・明るく
朝礼など、みんなの前で挨拶する機会がある職場もあるでしょう。その場合は、1分程度を目安に、短く明るく締めるのがおすすめです。伝えることは、メールと同じく「期間と復職日」「引継ぎ先」「感謝」の3つで十分です。
私事で恐縮ですが、〇月〇日から〇月〇日まで育児休業をいただきます。担当していた業務は〇〇さんに引き継いでおります。みなさまにおかれましては、育休取得にご協力いただき、ありがとうございます。家族との時間を大切にし、復職後は家事と育児で身につけたスキルを職場で活かし、より一層貢献できたらと思います。しばらくの間、ご迷惑をおかけすることになりますが、よろしくお願いいたします。
申し訳なさばかりを強調するより、引継ぎしたことや復職後の決意を伝えるほうが、聞いている側も気持ちよく送り出せます。
対面によるコミュニケーションもまだまだ重要
男性育休への理解は、少しずつ広がっていますが、まだ歓迎的ではない職場も多いと思います。
そのため、申し訳なさや気まずさが先立ち、批判を浴びたくない気持ちから、メールだけの挨拶で済ませてしまいがちです。しかし、それでは気まずい気持ちのまま育休に入ることになり、もやもやした後ろめたさを引きずってしまうかもしれません。
そんな思いを解消するためにも、感謝の気持ちをより伝えるためにも、可能な相手には対面でも挨拶しておくとよいでしょう。
対面挨拶と菓子折りのセットで
対面で挨拶するときは、言葉だけで済ませず、お菓子を用意することをおすすめします。一人ずつ手渡ししながら感謝を伝えられるので、気まずさがやわらぐ効果も期待できます。
お菓子は個包装タイプのものを選択しておくとよいでしょう。
私は最終出勤日までに、関係部署や長年お世話になった方へ個包装のお菓子を手渡しし、一人ひとりに感謝を伝えました。事前に一斉メールを送っていたこともあってスムーズに挨拶ができ、育休に好意的でないと思われた方の表情も、少しずつ和らいでいきました。
普段話すことのなかった職員と、これをきっかけにプライベートの話をするようになり、復職後も距離の縮まった関係が続いた例もありました。
渡すタイミングは最終出勤日までに
お菓子を渡すのは、最終出勤日か、その少し前がおすすめです。最終日は引継ぎの最終確認などで慌ただしくなりがちなので、余裕をもって数日前から少しずつ渡していくと、一人ひとりと言葉を交わす時間もとれます。
シフト勤務や外回りが多い職場では、全員に直接会えないこともあります。その場合は、休憩スペースなどに一言メモを添えて置かせてもらうとよいでしょう。
選ぶときの4つのポイント
- 個包装であること:手渡ししやすく、受け取った人が好きなタイミングで食べられます
- 常温で保存できること:冷蔵庫のスペースを気にせずに済みます
- 日持ちすること:休みの人や外出中の人にも、あとから渡せます
- 人数より少し多めに用意すること:配り漏れや、思わぬ来客にも対応できます
育休までの職場での過ごし方|挨拶以外の関係づくり
挨拶やお菓子と同じくらい大切なのが、育休までの日々の過ごし方です。
私は育休を申し出た直後に異動となり、新しい職場で過ごすのは5か月だけでした。そこで心がけたのは、業務を教わる体で一人ひとりと話すこと、そして頼まれた仕事はどんな単純作業でも引き受けることです。
話を聞くうちに、仕事やキャリアの悩みを打ち明けてくれる人も現れ、気づけば「部署内プチキャリアコンサルタント」のような役回りに(笑)。「いなくなる人」から「話を聞いてくれる人」へと、少しずつ周りの見方が変わっていきました。
気まずさや周囲の目への向き合い方は、こちらでも詳しく解説しています。
まとめ:丁寧な引継ぎと挨拶が、復職後の自分を助けてくれる
育休前の引継ぎと挨拶は、職場のためだけでなく、復職後の自分のためにもなります。
- 引継ぎは引継書と口頭の両方で、育休開始日までに終える
- 他部署の人には、公表の了承を得てから自分から直接伝える
- 挨拶はメールと対面の両方で。お菓子を添えると、感謝がより伝わる
職場の雰囲気も上司の考え方も、会社によってさまざまです。「私の場合、どう切り出せばいいんだろう」とお悩みの方は、一緒に解決策を考えることもできますので、お気軽にご相談ください。
育休取得日まで肩身の狭い思いで過ごすことになりそうな方にとって、この記事が一日でも安心して過ごせる日を増やすきっかけになればうれしいです。
