毎日、仕事に家事に子育てと、休む間もなくフル稼働。
気が付けば「私ばっかり頑張ってる…」——そんな「ワンオペ状態」にお悩みの共働き家庭の妻は、決して少なくありません。
特に、夫や旦那が家事や育児に協力しない状態が続くと、イライラや孤独感が少しずつ積み重なっていきます。
スマホやゲームに夢中な姿を見て「少しくらい動いてくれても…」とモヤモヤしたこともあるのではないでしょうか。
この状況を変えるためには、「家事や育児はふたりの仕事」という意識を夫婦で共有し、行動を少しずつ変えていくことが大切です。
本記事では、キャリアコンサルタントとして家事や子育ての相談に数多く携わり、自身も6か月の男性育休を経験した筆者が、夫や旦那側の心理的ハードルや行動の背景をひも解きながら、協力してくれるようになるための具体策をお伝えします。
著者プロフィール
キャリアリカバー代表。国家資格キャリアコンサルタント(登録番号16062528)
企業・教育機関・医療機関を対象に、キャリアコンサルティングや研修を行うほか、
個人向けには、キャリアカウンセリングやキャリアプログラムを提供。
現在は心療内科クリニックや大学で「キャリアデザイン」の講師として活動、
東京都健康長寿医療センター研究所では、キャリアコンサルタントとして孤立・孤独の予防の研究に従事。
これまでに6,600回以上のキャリア相談と700回以上の研修・セミナーを実施。
男性育休6か月や家事育児10年以上の経験、自ら転職7回、ニート2年、事業縮小による解雇経験もあり、
実体験に基づいた共働き家庭のキャリア支援やレジリエンスも得意です。
家事や子育てに消極的な夫の「心理的ハードル」を理解する
まずは、家事や子育てに消極的な夫の気持ちを理解するところから始めましょう。
下記のようなことが挙げられるかと思います。
「男は仕事・女は家庭」という無意識の価値観
夫が家事や子育てに消極的な背景には、無意識に刷り込まれた価値観が影響していることがあります。
このような価値観が残っていると、「家事や育児は自分の仕事ではない」と自然に思い込んでしまうことがあり、それが行動のブレーキになっているケースも少なくありません。
私自身も、幼少期は父が働き、母が専業主婦という家庭で育ち、結婚するまでは、その環境を当たり前だと感じていた部分がありました。
しかし、実際に家庭を持ち、育児に関わる中で、「当たり前」だと思っていたことが、実は偏った思い込みだったことに気づくようになりました。
収入が多い方が偉い?仕事優先になりがちな夫の意識
近年はワークライフバランスが重視されるようになりましたが、それでも「家計を支えているのは自分だから、家事や育児は妻がやるべき」という意識が、夫の中に残っていることがあります。
特に、夫が高収入の仕事や責任の重いポジションに就いている場合、「育児よりもまずは仕事」「休日は仕事に備えて休む」など、家事育児を後回しにしてしまいがちです。
私も、第一子の誕生時にちょうど異動と昇進が重なり、仕事を優先する選択をしました。
その結果、育休中だった妻に負担をかけることになり、かなり疲弊させてしまいました。
この経験を反省し、第二子の誕生時には6か月の育休を取得。
家事育児の大変さを身をもって知ったことで、夫婦の役割分担や支え合いの大切さを深く実感するようになりました。
話し合い不足が、すれ違いの原因に
家事や子育ての負担が妻に偏りがちな背景には、夫婦間のコミュニケーション不足があることも少なくありません。
たとえば、「夫は仕事、妻は家庭」といった役割分担が、あえて話し合うこともなく“暗黙の了解”になっているケース。
これでは、家事や子育てについての認識がズレたまま進み、気づけば妻ばかりが大変な思いをしている…ということも。
私自身、過去の交際相手とのコミュニケーション不足が要因で失恋したことをきっかけに「話さないことが一番のすれ違いになる」と痛感しました。
その経験があったからこそ、結婚後も育児や家事の分担、ちょっとした日常のことまで、妻や子どもと話す習慣を持つようにしています。
完璧思考がストレスを生む
家事も子育ても、手を抜いたらいけない——そう思えば思うほど、自分自身を追い込んでしまうことがあります。
そして、夫婦どちらかが完璧を求めすぎると、相手にも無意識にプレッシャーを与えてしまい、家庭の雰囲気がギスギスする原因になり、家事育児に消極的になることも。
私たち夫婦の場合、幸いにも得手不得手がうまく補い合える関係で、「できる方がやる」「お互い無理しない」が自然なルールになっています。
「100点じゃなくてもいい」「ざっくりできてればOK」くらいの気持ちで取り組むことで、家の中の空気もグッと穏やかになります。
家事や子育てに対する自信のなさ
特に男性の場合、家事や子育てに慣れていないと「失敗したら怒られるかも」「やり方が分からない」といった不安から、なかなか積極的になれないことがあります。
この自信のなさが、家事育児への参加をためらわせる大きな理由になっていることも。
私自身、家事は一人暮らしでそれなりに経験していましたが、育児に関してはまったくの未経験。
おむつ替えも、寝かしつけも、最初はまさに手探り状態でした。
それでも、妻と一緒に試行錯誤しながらやってみることで、少しずつ慣れ、自信をつけていくことができました。
「できないからやらない」のではなく、「一緒にやって覚えよう」が夫婦の合言葉になっていったのです。
このように、夫の行動が変わらない理由には、こうしたさまざまな心理的要因が絡んでいます。
責めるよりも、まずは理解し、「一緒に考えよう」と伝えることが、夫婦の協力体制づくりの第一歩になります。
夫婦で協力しあうための具体的な方法
では、そのハードルを乗り越え、夫婦で協力しながら家事・育児を進めていくにはどうすれば良いのでしょうか?
ここからは、筆者自身の経験や夫婦のキャリア相談において、実際に効果があった具体的な方法をご紹介します。
「家事育児=重要な仕事」と捉え、タスクを見える化する
家事や育児は、単なる「手伝い」ではなく、「家庭というチームを支える重要な仕事」という認識を持つことが大切です。
それにもかかわらず、夫にとってはその全体像が見えづらく、「何をやったらいいのかわからない」「自分がやる必要ってあるの」という状態になっていることも。
そこで有効なのが「家事育児の仕事の見える化」。
我が家では、夫婦で家事育児の分担を始めた頃、週に一度、家事と育児のタスクを一覧にして書き出し、「今週はどこが大変だった?」「どちらかに偏っていない?」と一緒に振り返る時間を設けていました。
リストにして可視化することで、曖昧だった家庭内の仕事が共有され、夫婦で行動しやすくなるのです。
また、タスクの偏りにも気づきやすくなり、「自然と助け合う関係」が少しずつ築かれていったように思います。
そして、こうした話し合いと振り返りを続けていくうちに、協力すること自体が当たり前の習慣になっていきました。
夫の「仕事スキル」を家庭に活かす
家庭内の家事や育児を「仕事スキル」で捉えると、夫の得意分野がぐっと活かしやすくなります。
たとえば、スケジュール管理や進行管理が得意な方なら、家族全体の予定やイベントをカレンダーで整理するという仕事を、数字や分析に強ければ、食費や生活費の管理、買い物計画の最適化などを任せてみるのも一案です。
「家庭は仕事と違って行き当たりばったり」と思っていた夫も、自分のスキルが家庭内で“役に立つ”と実感できると、前向きに関われるようになるケースは多いものです。
私自身、家事も育児も比較的得意なほうですが、得意だからといって何でも一人で抱えるのではなく、夫婦でお互いの強みを理解し、効率よく役割分担することを意識しています。
たとえば、食材の買い出しや時短料理は私、子どもの洋服の管理や洗濯全般は妻——というように、それぞれの仕事力を家庭でも最大限に発揮できるようにしています。
こうした分担を行うことで、家事育児への参加を自然な流れに変えてくれますし、家庭もチームとしてのパフォーマンスが高まっていくのを感じています。
週末に「ひとこと家族会議」をしてみる
夫婦のすれ違いを減らすには、まず「話す習慣」をつくることが何より大切です。
でも、普段あまり会話をしていないご家庭では、「いきなり改まって話すなんて無理…」という方も少なくないはず。
そこでおすすめなのが、「ひとこと家族会議」です。
毎週末、たった一言でいいので「今週、家のことでどうだった?」と軽く振り返る時間をつくってみてください。
コーヒー片手のゆるい雑談の中にこそ、実は大事な気づきが眠っています。
「手伝っているつもりだったけど、そこが大変だったんだね」「来週はここを変えてみようか」など、ちょっとしたやりとりが家庭の空気をやわらかくし、夫婦の関係を自然に整えてくれます。
たったひとことの習慣が、家事や育児に対する意識や行動を大きく変えるきっかけになるかもしれません。
そして、続けることでいつか「しっかり向き合って話せる関係」に発展していく可能性だってあるのです。
「完璧」を手放して、楽しさやご褒美を取り入れる
家事や育児に取りかかる際、「ちゃんとやらなきゃ」「完璧にこなさないと」と思いすぎてしまうと、いつの間にか心も体もすり減ってしまいます。
こうした「ねばならない思考」や「完璧主義」のような考え方は、家庭に必要以上の緊張感を生み、協力体制の構築をむしろ難しくしてしまうことも。
特に夫の立場からすると、「完璧にできないならやらない方がマシ」「どうせダメ出しされるだけ」と感じて、関わる意欲を失ってしまうケースも少なくありません。
そんなとき、大切なのは「ざっくりでいい」という気持ちを持つこと。
「3割できたら十分」「やろうとしてくれたことが嬉しい」と受け止めるだけで、家の中の空気はずいぶん柔らかくなります。
ちなみに、我が家では、私がざっくりタイプ、妻がしっかりタイプ。
私が大まかに段取りし、妻が仕上げるというスタイルで、それぞれの特性を活かしながら家事や育児を進めています。
また、家事が終わったら「ご褒美タイム」として、夫婦でスイーツを楽しむのも良い気分転換になります。
リラックスしながら会話ができるので、この時間を「ひとこと家族会議」にあてて、今週の出来事を振り返るのもおすすめです。
小さな楽しみがあるだけで、日常の家事がちょっとしたイベントになるから不思議です。
「真面目にやること」よりも、「一緒に楽しむこと」を優先してみる。
そんな視点が、家事や育児を前向きに変え、夫婦の関係も自然にほぐしてくれるのではないでしょうか。
「ありがとう」「助かった」の一言が、夫の自信を育てる
家事や育児への参加がうまくいくかどうかは、やった内容そのものよりも「その行動がどう受け取られるか」に大きく左右されます。
特に、慣れないことに挑戦する場面では「ちゃんと評価されるのか?」という不安を感じやすく、評価の有無によって次の行動への意欲が変わることも少なくありません。
だからこそ、「ありがとう」「助かったよ」といったシンプルな感謝の言葉には、思っている以上に大きな力があります。
私自身も、初めての育児でおむつ替えやゲップ出しに挑戦した際、慣れない作業に戸惑いながらも、妻からの「ありがとう」の一言に、何度も救われました。
「まだまだ不慣れだけど、やってみてよかった」と思えることで、自然と「次もやってみよう」という前向きな気持ちが生まれていきます。
こうした小さな行動に対するポジティブなフィードバックこそが、夫の心のエンジンを動かす原動力になるのです。
家事育児は「夫婦の絆」と「キャリア」を育てるチャンス
家事や子育ては、夫婦の絆を深めるだけでなく、キャリアアップの機会でもあります。
家事や子育てを通じて協力し合うことで、お互いのスキルやコミュニケーション能力が向上し、仕事にも良い影響を与えることが期待できます。
ストレスが軽減され、楽しく家事育児を過ごすことができれば、家庭だけでなく、仕事にもプラスの効果をもたらすでしょう。
家事や育児を単なる負担として捉えるのではなく、夫婦で協力し合い、成長できる機会として捉えることがポイントです。
お互いの強みを活かし、支え合うことで、より良い家庭環境を築いていきましょう。
家事や子育てに協力しない夫や旦那に対して、モヤモヤしたり、つい、イライラしたりしてしまう——。
そんな日々が、ちょっとした声かけや働きかけをきっかけに、少しずつ変わっていくこともあります。
「なんでやってくれないの?」と責めるのではなく、「どうすれば一緒にできるか?」と問い直してみる。
その小さな視点の転換が、夫婦関係にも、家庭の空気にも、大きな変化をもたらします。
まとめ
- 家事や子育てを「ふたりの仕事」と捉えてみる
- 得意なことを活かした役割分担を考えてみる
- 小さな「ありがとう」の積み重ねを大切にする
どれも特別なことではないかもしれませんが、継続していくことで確かな変化が生まれます。
夫婦で支え合う体験は、単に家庭を円滑にするだけでなく、キャリアや人間関係構築力などのスキルアップとしても大きな力になっていきます。
あなたのご家庭に、少しずつ「ちょうどよい協力のカタチ」が育っていくことを願っています。
\ あなたの「これから」を、いっしょに考えてみませんか? /
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