育休や人事異動、退職、体調不良による休職などの際に発生する引継ぎ業務。
できることなら後任の方がスムーズに業務に取り掛かれるよう、円滑な引き継ぎを行いたいものです。
円滑な引継ぎを実現するためには、引継ぎの内容が記載された書類、すなわち引継書の作成を行いたいところ。
しかし、突然のことで時間にゆとりがない場合は、目先の業務に時間を奪われてしまい、引継書を作成する余裕もなく、つい口頭のみの簡単な引継ぎになりがちです。
それでもやっぱり引継書を作成したほうがよいのでしょうか。
7回の転職、異動、休職など豊富な引継ぎ経験を持つ(笑)キャリアコンサルタントが、引継書の必要性について実体験を交えて解説します。
筆者「キャリアリカバー®」プロフィール
- 国家資格キャリアコンサルタント(登録番号16062528)
- 人生が好転、自信がつくキャリア相談(相談実績:2,500人・6,600回以上)
企業・学校・転職エージェント・心療内科クリニック等 - セミナー・講義実績700回以上
企業・学校・心療内科・就労支援機関 - 心療内科クリニック「キャリアデザイン」講師&キャリアカウンセラー
精神疾患や発達課題を抱えた患者さんの復職・就職支援プログラムの企画・運営 - 数多くの失敗や負の経験からの脱却
転職7回・ニート2年・被パワハラ・事業縮小による解雇等 - ワークライフバランス重視
男性育休6か月取得、共働き家庭、二児の父、家事は料理を担当。遊びもゲームもブランクもキャリア♪
口頭のみの引継ぎのメリットとデメリット
口頭のみの引継ぎのメリット
口頭のみの引継ぎのメリットは、引継書作成の手間が省けるなど、時間をかけずに引継ぎを済ませられることです。
私はこれまでに転職を7回、異動を2回、育休を1回経験しましたので、引継ぎの機会は比較的多かったほうかと思います。
20代の頃の私は、恥ずかしながら引継書を作成する機会が全くありませんでした。
そのため、退職の際は、口頭のみで引継ぎを行っていました。
引継ぎ相手に自分のこれまでの業務を一方的に話して、あっさりと終了。
引継ぎなんて楽勝じゃん、と思っていました。
口頭のみの引継ぎはデメリットのほうが多い
しかし、退職後に前職のスタッフからトラブル対応や引継ぎ内容に関する確認の問い合わせが相次いで発生。
お世話になった先輩ということもあり、退職したからと言ってないがしろにするわけにもいかなかったので、それらの対応をすることに。
その結果、引継ぎ呪縛から逃れるのに相当時間がかかり、肉体的にも精神的にも疲弊してしまいました。
引継ぎは、引継書作成+口頭での説明が効果的
このような思いを二度としたくなかったので、口頭のみの引継ぎによるトラブルが発生してからは、引継書作成に注力することに。
それに加え、口頭による説明をセットで行うことにしたところ、問い合わせが激減するなど、トラブルもなくスムーズに引き継げました。
いまもこの記事を書きつつ、何度思い返しても、あの頃の自分は社会人としての自覚が足りなかったものと反省しています。
それでは、引継書作成のメリットはどんなところにあるのでしょうか。
引継書作成のメリット4つ
私が実感した引継書作成のメリットは以下の4点です。
引継ぎ内容の体系化により、引継ぎ相手に分かりやすく正確に伝えられる
引継ぎで重要なポイントは、引継ぎ相手に引継ぎ内容を抜け漏れなく正確にバトンを渡すことです。
そのためには、引継ぎ内容を見える化・体系化して引継書を作成することが効果的です。
体系化とは、個々のバラバラな情報や事項を関連付けて一つにまとめることで、たとえば辞書やマニュアルなどが挙げられます。
体系化を行うことにより、引継ぎ相手は引継ぎ内容を一目で理解することができます。
一方、引継ぎを行う側にとっても、引継書作成の過程で引継ぎ内容やポイントを整理できるメリットがあります。
見える化・体系化を意識した引継書の作成方法を下記にご紹介あします。
分かりやすい引継書作成のポイント
- 引き継ぐすべての業務内容を箇条書きで書き出す
- 箇条書きで抽出した業務内容をカテゴリー別に分類し体系化する
- 業務遂行の際のポイントや留意点を書き出す
- プロジェクトや期日が決まっている仕事があれば書き出す
いかがでしょうか。
このような手順で引継書を作成することで、”カテゴリー→業務内容→ポイント&留意点→今やるべき仕事”の順に整理され、引継ぎ相手に簡潔に分かりやすく伝えることができます。
一方、引継ぎ相手のほうも、不明な点が発生した際、引継書をその都度見直すことができるため、混乱に陥る可能性が少なくなります。
引継ぎ相手も自分も負担が軽減する
口頭だけの引継ぎの場合、引継ぎ相手はメモを取りながら説明を受けることになると思いますが、メモの取り忘れや解釈の違いなどによる相互理解の齟齬が発生するリスクがあります。
このような状況になってしまうと、引き継いだ職場を離れた後も、引継ぎ相手から引継ぎ内容に関する問い合わせを受ける可能性が高くなります。
その際、「自分はもう引継ぎを済ませたから関係ない」などの態度をとってしまうと、人間関係にも悪い影響が出てしまいます。
特に、引継ぎを行う側が会社に不平不満を抱えて退職する場合は、そのような考えに陥りがちですので(まさに私がそうでした。反省・・・)気を付けたいところです。
引継書を作成していれば、引継書に記載の業務内容をお互いに確認しながら、引継ぎを行うことができ、引継ぎ後の問い合わせへの対応や、言った言わないなどのトラブルを回避することができます。
また、引継ぎを行う過程で、引継ぎ相手からの疑問や質問を通して引継書がブラッシュアップされていきます。
これにより、その後に引継ぎを受けるメンバーの負担軽減も期待できます。
上司や部署メンバー間で引継ぎ内容を一斉共有できる
引継ぎ内容は、上司や部署メンバー間で共有することも重要です。
自分の引継ぎ内容やポイント・留意点などを、書面を通して上司や部署メンバーが把握することで、同部署内での連携が取りやすくなります。
引継書の一斉共有により、上司は欠員分の業務分担をスムーズに行うことができます。
しかし、部署メンバー全員が多忙で誰も引継ぎ業務を受けられないなど、キャパオーバーが発生することもあるでしょう。
この時、上司の手元に引継書があれば、例えば管理職会議などで上司が引継書を配布し、他部署からの協力依頼をスムーズに行うことができます。
さらに、引継ぎ相手が異動や退職などで職場を離れる際、自分が作成した引継書を加筆修正してブラッシュアップできるため、ゼロから引継書を作成しなくて済むようになります。
そのようにブラッシュアップされた優れた引継書は、やがて引継ぎマニュアルとなり、会社にとっての財産となっていきます。
引継書をキャリアの棚卸ツールとして活用できる
また、引継書作成のプロセスを通して、大切なものを獲得することができます。
それは、自分自身のキャリアの棚卸ツールです。
キャリアの棚卸ツールとは、自分のこれまでの業務経験や実績等をまとめたもので、今後のキャリア形成にも役立つツールです。
体系化された引継書に自分の実績や努力したこと、大変だったこと、スキルアップしたことなどを書き加えれば、キャリアの棚卸ツールの完成です。
また、退職予定の方や転職を検討されている方は、業務内容に実績などを加えてメンテナンスすれば、職務経歴書として活用することができます。
履歴書や職務経歴書に書くネタが見つからない方は、こちらのコラムも参考にしてみてください。
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なお、特に引継ぎ予定のない方は、年度末など節目の時期に業務内容を体系化しておくことをおすすめします。
業務内容を体系化することにより、自分のこれまでのキャリアの整理や、今後のキャリアパスを意識してみると、今までと違った視点で業務報告や業務計画を行うことができます。
引継書作成による引継ぎは、キャリアアップのチャンス
上記のことから、引継書の作成による引継ぎは、口頭のみの引継ぎに比べて、仕事のトラブルなどのリスクを回避するほかに、引継ぎ相手にとっても、部署全体にとっても、そして自分自身にとってもメリットが多い業務であることが分かります。
あえてデメリットを挙げるとすると、業務量の多い方にとっては、引継書の作成に時間がかかってしまう点です。
そのような方は、例えば四半期ごとに自分の業務内容を体系化するなどして整理しておくと、いざという時にスムーズに引継ぎができるのではないでしょうか。
また、転職活動と並行して引継ぎを行っている方は、転職活動の負担を軽減する方法もあります。下記の記事も参考にしてみてください。
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